2006年ジョージタウン大学経営学部の最終学年を迎えた3人共同創業者により立ち上がったサラダに特化したファーストフード店スイートグリーンの拡大は当初は理解を得るのが難しいコンセプトでした。食への情熱と栄養への関心、そして起業家になりたいという想いと、手軽に手ごろな価格で健康的なファーストフードが世の中に存在すべきであるという強い信念を持ち続けることで、試練を乗り越えてきました。
ファーストフードを再構築したスイートグリーンの創業者たち①はこちら
先入観を持たず、臨機応変に舵取りしてきた創業者たちは常に新たな概念を世間に提案し、拡大してきました。後編では、更なる拡大に向けたスイートグリーンの将来に関わる自動化キッチンやビジネスの核であるメニュー開発に迫ります。
自動化への全力投球 インフィニット・キッチン
昨年、スイートグリーンは未来を見据えた大きな一歩を踏み出し、InfiniteKitchen (インフィニット・キッチン)を発表しました。これは、1時間あたり最大500個のボウル、プレート、サイドメニューを生産できる完全自動化ラインです。一般的なファーストフード店のフロントとデジタル生産ラインを合わせたよりも50%多い生産量に値します。従業員は従来通り準備作業と仕上げを担当します。スイートグリーンが自動化に真価を見出しているのは、明らかな人件費の節約に加えて、注文の精度、分量の管理、食品の安全性、処理能力の向上です。数年前、共同創業者たちは、デジタル注文の初期と自動化の将来性との間に類似点を見つけました。そして、同社は早期導入企業になるのにちょうどいいタイミングで適切な規模でした。変革をもたらす技術に多額の投資をするには十分な規模でありながら、気負いすることなく将来性を思い描けるほどの小さい規模でした。
実際に社内チームを作り、自力で自動化開発を進め始めたものの非常に難しいことに気付いたと共同創業者のネマン氏はいいます。しかし、2016年にキッチンロボットのスタートアップ企業Spyce(スパイス)に出会ったときにブレークスルーが起きました。スパイスはボストンに拠点を置く2つのファストカジュアルレストラン(最初のレストランは2018 年にオープン) でサラダや穀物ボウルを提供しており、インフィニット・キッチンを搭載しています。「私たちはどちらも同じことをしようとしていて、健康的な食品を大規模に提供しようとしていました。彼らはそれを自動化で実現しており、彼らのスーパーパワーを、私たちのスーパーパワーと組み合わせることができれば、本当に特別なものになると思いました」。スイートグリーンは2021年にスパイスを買収し、メニューとオペレーションシステムの調整を開始しましたが、既存のモデルに自動化を単に重ねるのではなく、レストランの運営方法を根本から再考しました。これには、キオスクの導入、コンシェルジュによる注文、キッチン前の食材準備の移行などが含まれます。スイートグリーンでは、自動化を通してマシンが迅速かつ正確に動作するため、接客スタッフは常に顧客に対してフレンドリーでいられる環境作りを推進し、コミュニティスペースのように感じられるような顧客体験を生み出す場所を目指しています。
サラダ作りロボットを導入した最初の2店舗は昨年オープンし、1つはイリノイ州ネイパービル、もう1 つはカリフォルニア州ハンティントンビーチです。その後導入を拡大し、2024年に同社が新たに建設する24~26店舗のうち4分の1以上がインフィニット・キッチンを導入しています。同社では、郊外から都市部までさまざまな環境で自動ラインをテストし、さまざまなタイプの店舗でどのように機能するかを調査しています。これまでのところ、結果は有望です。予想どおり、自動化システムは処理速度の向上、注文精度の向上、一貫した分量を実現し、食品廃棄物を最小限に抑えています。さらに、これらの店舗では従業員の離職率が大幅に低下しており、チームメンバーはテクノロジーによってより楽しく管理しやすい職場環境が生まれたと述べています。今後、導入ペースは加速し続けると予想されており、2025年に計画されている新店舗の50%でインフィニット・キッチンが採用される予定です。同社は、今後5~7年以内に新規店舗の大半に自動化を導入すると見込んでおり、古い店舗の大半も、この技術を取り入れるために改装予定です。
サラダを越えて
同社のデジタル化への取り組みは業界でも注目されてきたポイントですが、IPOを通してより多くの消費者にリーチする方法を模索し始めたときに、メニューの拡大が大きな焦点となりました。昨年秋、同社が「ボウルの一歩先」と表現する新しいカテゴリーのプロテインプレートを導入しました。ローストベジタブルやグレインの上に、味噌グレーズサーモンやホットハニーチキンといったプロテインをトッピングしたメニューです。今年2月には、カラメルガーリックステーキをテスト導入しました。これは、チェーンが牛肉を提供した初めてのことでした。ガーリックスパイスブレンドで味付けされ、キャラメルの焦げ目がつくようにローストされた、グラスフェドの牛ステーキです。パイロット期間中、ディナーの注文のほぼ5分の1を締め、数か月後に全国展開されると同社史上最高の売上を記録しました。
プロテインメニュー拡大は大成功を収め、毎食サラダを求めていない新しい客層を取り込むきっかけとなりました。また、これらプロテインメニューはディナー帯の既存店売上の重要な原動力にもなっており、2023年第4四半期の売上の約3分の1、2024年第2四半期までには40%に近づきました。
「人々は今や、ファーストフードに旬の食材を求めています。17年前は、そのような世界ではありませんでした」とジャメット氏は言います。ブランドが進化し続け、リーチを広げるにつれて、その影響は大きくなるばかりだと彼は付け加えます。「私たちがやっていることは、個人だけでなく、広く食品システムにも多くの利益をもたらすブランドを作ることです。我々のプラットフォームが拡大するにつれて、ウエイトや購買力だけでなく、世間の話題をも変え続けていきたいです」。
情報元:
How Sweetgreen’s Founders Reinvented Fast Food by Creating Their Own Playbook (QSR Magazine)
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