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ファーストフードを再構築したスイートグリーンの創業者たち①

December 12, 2024

サラダに特化したファーストフード店の代表格Sweetgreen(スイートグリーン)は、2006年ジョージタウン大学経営学部の最終学年を迎えた3人の同期による“無知がゆえ”のアイデアを起点にスタートしました。ときに経験不足は強力な強みになることがあります。スイートグリーン の共同創業者である ジョナサン・ネマン、ニコラス・ジャメット、ナサニール・ルーは、チェーンの成功はレストラン経営のノウハウ不足によるものだと考えています。

スイートグリーン黎明期

「我々は起業家になりたいと思っていましたが、レストランについては何も知りませんでした。それは間違いなく良いことでした。なぜなら、今知っていることを当時知っていたら、おそらくやらなかったでしょうから。当初は『そんなに難しいことなの?』と思っていました」とネマン氏は言います。しかし彼らはすぐに現実を知ります。大学生として初めて賃貸契約を結び、資金を調達することは、気が遠くなるようなプロセスでした。当時は、サラダをまともな食事と考えない人も多く、サラダボウルのファーストフード店などを想像する人は少なかったので、彼らのアイデアに投資家たちは眉をひそめました。

健康的で手頃な値段のメニューが無い大学のカフェテリアに不満を持っていた3人は、食べ物への情熱と栄養への関心、そして起業家になりたいという想いと、このコンセプトが世の中に存在すべきであるという強い信念を持ち続けることで、人々を納得させるという試練を乗り越えました。その後ベンチャー資金として約35万ドルをかき集め、2007年に卒業してから二ヶ月後、約16坪の店舗でスイートグリーンを立ち上げました。スペースの制約もあるため、彼らは季節の食材を中心に、食材の品質と原産地を重視したシンプルなメニューを作ることにしました。

デジタル ピボット

彼らの経験不足から走り出したスイートグリーンは、先入観が無いからこそ自由に戦略を書き換え、多くのファーストフード店の従来モデルに挑戦することが出来ました。3人はサプライチェーンのあり方をよく理解していませんでしたが、食材の信頼性だけは確保したいと考えていました。つまり、旬で高品質の食材を地産地消したいと考えていたのです。これを大規模展開するには、米国各地に持続可能なサプライチェーンを構築する必要があるということは理解していても、それを実現することがどれだけ難しいかを知らなかった彼らにとって、地域のサプライチェーンを活用するために、各コミュニティに深く潜入することが戦略の核となりました。最初の6年間はワシントンDCとフィラデルフィアに展開し、サプライチェーン構築から不動産調査、ブランドを地元コミュニティに根付かせることまで、何度もテストと改良を続けました。

決定的な瞬間は、2013年にニューヨーク、ボストンへの拡大を計画し始めたころに訪れました。競争相手も増え、独自性を強化せざるを得ない時が来たのです。また、世界はテクノロジーの観点からも変化していました。スイートグリーンが立ち上がったのはiPhone初号モデルが発売されてから二カ月後のことで、事業拡大が始まった頃にはスマホが日常に根付いていました。当初デジタル化はビジョンには無く、またレストラン業界にデジタル化は存在していませんでしたが、スイートグリーンでは2013年に独自アプリを開発し、オンラインの事前注文を業界屈指の速さで取り入れたブランドとなりました。ニューヨーク、ボストンの店舗はデジタルファーストの店舗を設計し、これはスイートグリーンが米国北東部で急拡大し始めた時期に重なります。同社では2016年に社内技術チームを構築し、独自のデジタルプラットフォームの改良を重ねることで、2018年までにアプリ経由の注文は総収益の25% 以上を占めるようになりました。

その後もデジタルマイルストーンを積み上げ、2018年にはオフィスや病院などの施設にオフサイトドロップオフポイントとして機能する「B2B拠点」を導入しました。さらに2020年にはアプリでの注文・購入機能に並んで独自のデリバリーまでを展開するファーストフードブランドの先駆者となりました。パンデミック明け以降、同社の売り上げの70%以上がデジタルチャネルから流入しており、こうしたデジタル顧客向けのドライブスルーの展開に進出しました。また、初のデジタル専用レストランを導入し、店内の座席と店内注文を廃止して、オンラインとアプリの注文のみに焦点を当てました。

スマートなスケーリング

2021年6月にスイートグリーンがIPOを申請した時の状況としては、米国13州とワシントンDCに拡大し、200超のパートナーとローカルサプライチェーンを構築、2021年の年間収益は3 億ドルを超えており、同年11月に約55億ドルの評価額で株式市場にデビューしました。IPOの理由の一つには、認知度が店舗数を上回っているということにありましたが、15年間で5倍に拡大した店舗数は、2021年末時点では150店舗にとどまっており、1,000店舗というビジョンには収益性という大きな障害がありました。それ以来、収益性に戦略的にアプローチするため、2022年には人員削減に乗り出し、新店舗開発の不動産選定においては質より量を重視しました。

3人の共同創業者は、一般的に、ブランドが成長するにつれて品質が低下することが多い理由と、それを避ける方法についてかなりの時間を費やし、会社がスケールしていく中で学び、改善してきました。創業者のひとり、ジャメット氏は、サプライチェーンの大部分を売却すれば、もっと収益モデルの修正が簡単だったかもしれないと振り返りつつも、ローカルサプライチェーンの完全性の維持がIPO後の同社内での会話の大部分を占めて来たと述べています。「我々の規模で季節性や地域性を追求するのは無謀だと言われてきましたが、私たちにとって、スイートグリーンのブランドを維持するためには、食材の品質を維持すること以上に重要なことはありません」。

先入観を持たず、臨機応変に舵取りしてきた創業者たちは常に新たな概念を世間に提案し、拡大してきました。

後編では、更なる拡大に向けたスイートグリーンの将来に関わる自動化キッチンやビジネスの核であるメニュー開発に迫ります。

情報元:

How Sweetgreen’s Founders Reinvented Fast Food by Creating Their Own Playbook (QSR Magazine)

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