

イギリス発の製造業Isembard(アイゼンバード)が、工作機械工場をフランチャイズ化するモデルを展開しています。これまでフランチャイズ方式が導入されてこなかった製造業への導入という珍しい動きです。また、町工場の後継者不足や事業承継が課題となる日本にとっても示唆に富む事例です。
ロンドンに本社を置く製造会社Isembard(アイゼンバード)は、CNC(コンピューター数値制御)工作機械を使用し、主に航空宇宙、防衛、エネルギー産業向けの精密部品加工を行っています。アレックス・フィッツジェラルドCEOはこうした重要産業における部品需要が増加する一方、製造供給が減少する状況に対応するため、2024年にフランチャイズ方式を開始しました。アメリカではミズーリ州セントルイスに拠点を置いています。同社の米国事業開発責任者ジャスティン・バウカム氏は、これは英国のみならず、アメリカやヨーロッパの他の地域にも当てはまる課題であると述べています。
CNC工作機械を使って部品製造する個人経営の工場をアイゼンバードのフランチャイズにすることで、製造業の効率化と活性化、異業種からの参入を目指しています。
現在同社は、ダラスに2拠点、セントルイスに1拠点、イギリスに3拠点の合計6拠点を展開しています。セントルイスの加盟店オーナー、ジョナサン・フォスター氏は心臓外科看護師から製造業に転身した一人です。アイゼンバードに加盟する前に機械部品工場の開業に携わりました。機械1台からスタートでしたが、国際規格の認証取得など本部のサポートにより、現在は4台の機械導入を進めています。
アイゼンバードと加盟店はMasonOSという共通のAI搭載型独自プラットフォームにより運営されています。アイゼンバードが開発したMasonOSは、見積もり、スケジューリング、調達、品質管理、納品まで一元管理するAI工場運営システムです。工場のパフォーマンスを常に可視化する役割も担っています。
この画一されたプラットフォームにより、製造業のみならず、フランチャイズ業界を含む異業種異業界から優れた事業者が、同社の技術、ブランド、エンジニアリング基準、そして顧客ベースへアクセスできるのです。
フランチャイズ加盟者は、ゼロからアイゼンバードとして工場を立ち上げることも、既存の事業をアイゼンバードの工場に転換することも可能です。地元企業としての経営を維持しながら、ブランド、ソフトウェア、顧客ネットワークを活用できます。
これらのコンセプト、独自技術が認められ、アイゼンバードは今年3月にはシリーズAラウンドで5,000万ドルの資金調達を完了しました。シードラウンドからわずか12ヶ月足らずのことです。今回の資金調達ラウンドは、Twitter、Coinbase、Etsyなどの初期投資家であるUnion Square Venturesが主導しました。この資金調達で、アイゼンバードは2026年末までに25拠点を開設し、エンジニアリングチームを拡大するとともに、ドイツ、フランス、ウクライナへの進出を加速させる予定です。
アイゼンバードのプレスリリースによると、部品製造業は年間1兆8,000億ドル規模の市場ですが、生産の95%を担う中小企業の数は急速に減少しています。平均的な経営者の年齢は65歳を超え、40%が5年以内の引退を予定しているといいます。この状況は、日本の町工場にも共通する課題といえるでしょう。
また、技術者の経験に依存しがちな属人的な業務プロセスも、AIによって標準化が進みつつあります。AIやソフトウェアによって製造技術や業務プロセスが標準化されることで、加盟店オーナーに求められるのは高度な加工技術よりも、チームを率いて事業を成長させる経営力になりつつあります。後継者不足に悩む日本の町工場にとっても、新たな事業承継モデルとして注目されます。
情報元
Isembard Raises $50m Series A to Open 25 AI-Powered Factories Serving Aerospace and Defence (Isembard)
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