

テクノロジーの進化は人手不足を補う一方で、人の雇用機会を奪うとも懸念されています。しかし、特にファストフード業界のような大量注文を扱う現場においては、そうとは言い切れない現状があります。
アメリカ大手ハンバーガーチェーンのバーガーキングは、今年2月からスタッフの業務フロー効率化を目的に開発されたAIヘッドセット「BK Assistant(BKアシスタント)」をテスト運用してきました。このAI音声アシスタントはChatGPTで有名なOpenAIの技術を搭載し、ヘッドセットを通してスタッフに直接業務情報を送ります。
「BKアシスタント」は例えば、在庫の残量や、メンテナンス・清掃に関する通知といった運営支援、調理方法をガイドするトレーニングなどを音声でアシストします。
更に、スタッフによる接客ワード「welcome(いらっしゃいませ)」「please(どうぞ)」「thank you(ありがとう)」などをAIが検知・分析し、こうして得た情報を管理者がコーチングやトレーニングに反映させます。これはスタッフ個人を評価するための分析ではなく、チーム全体をマネージャーが効果的に評価するためのもので、これによりホスピタリティ向上に役立てる方針であるとバーガーキングは述べています。また、サービスパターンを把握する目的があるとバーガーキングは付け加えています。
2月時点で米国内のバーガーキング約500店舗でテスト運用されてきた「BKアシスタント」は、年内中に全米のバーガーキングで利用されると報じられています。
今回の事例で特徴的なのは、これらのテクノロジーがあくまでも「人」を支援する仕組みであることです。在庫補充やメンテナンス、最前線での接客は人間が担当することが前提となっています。
更に、在庫切れで提供できないメニューを即座にメニューから取り下げることは、繁忙時の現場で頻繁に迫られる決断です。もし取り下げなかった場合、顧客満足度が下がる要因にもなります。AIからメニュー更新指示を受けることで即応できる環境を作り、顧客満足度の維持につなげるのです。
人の雇用を奪うどころか、AIが大きな雇用を生んでいます。しかし、AIを導入したことで、最前線に立つスタッフには、これまでとは違うニーズが出てきたことも見逃せません。POSシステムの操作、デジタル注文の管理、キオスク端末のトラブルシューティング、配達ドライバーと連携しながら、スピードと接客クオリティを維持することが求められているのです。
エントリーレベルの仕事であっても、10年前には必要とされていなかったレベルのデジタルリテラシーが求められるようになりました。
スタッフだけでなく、加盟店オーナーにもこのテクノロジーについていくだけのリテラシーと、よりリアルタイムで店舗運営を評価しパフォーマンスを上げていくことが求められるようになりました。米国内のバーガーキング店舗の大部分を占める独立系加盟店オーナーにとって、統一化されたテクノロジーへの対応と、各店舗単位での運営方針の確立が同時に必要になるのです。また、テクノロジーによって業務の効率性と拡張性が向上したことで、労働力の活用基準が引き上げられていることにも対応しなければなりません。
今回のバーガーキングの事例は、「人がAIに置き換わる」のではなく、「AIによって人の役割が変わる」ことを示しています。
注目すべきは、AI導入が進む中でも人材需要が維持・拡大している点です。現時点でこれらのテクノロジー導入がバーガーキングの直接的な成長につながるかは不明ですが、テクノロジーが店舗の処理能力を高め、事業拡張を支えるインフラとして機能する可能性はあります。
レストラン業界において、顧客体験が最重要事項であることはこれからも変わらないでしょう。人手不足が続く日本において、「省人化のためのAI」ではなく、「人を活かすためのAI」へ発想転換することが、今後の競争力を左右するポイントになりそうです。
情報元:
Burger King’s 60,000-Worker Hiring Push Reflects the Reality of Running a Tech-Enabled Restaurant at Scale(Restaurant Technology News)
Burger King Tests AI Headsets to Support Restaurant Operations and Training(Restaurant Technology News)
Burger King is testing AI headsets that will know if employees say 'welcome' or 'thankyou' (abc7 NY)
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