

米国のフィットネス業界では近年、「集客力の高い低価格帯ジム」か「価値で選ばれるブティックモデル」かの二極化が、より鮮明になっています。
パーソナルトレーニングを提供するFitness Together(フィットネス・トゥギャザー)の加盟店オーナーで、加盟店トップクラスの売上げを保持するステイシー・ダイクマン氏は「ジムは、集客力の高い低価格帯のジムか、ブティックモデルのどちらかしか存在しません。その中間はありません」と話します。ダイクマン氏は快適なスタジオ環境、パーソナルトレーニングによる筋力と有酸素運動、カスタマイズされたトレーニングプログラムを提供することで、フィットネス業界の中でも成長著しいニッチ市場で成功を収めています。
こうした“ニッチ需要”はクランチフィットネスのような大型スタジオを展開する大手でも近年注目されています。クランチは2024年末から最新型ジム「クランチ3.0」を打ち出していますが、大手加盟店CRFitness Holdingsが運営するテキサス州のスタジオはこの「クランチ3.0」を採用し、さらにリフォーマーピラティススタジオを併設し、グループフィットネスサービスにも力を入れています。
ブティックフィットネス市場は、会員費が高額にもかかわらず活況を呈しています。市場調査会社MetastatInsightによれば、このセグメントは世界で54億ドル以上のマーケットシェアがあり、2032年までに130億ドルの市場規模に達すると予測されています。
「今、ウェルネス、フィットネス業界で成功するには集客力が高い低価格帯のジムか、ブティックモデルかのどちらかです。他社との差別化を図り、ミッションに忠実であり続けることが重要です」と話すのは、ミネソタ州に拠点を置き、10州以上に35スタジオを展開する新興フィットネスフランチャイズ、Discover Strength(ディスカバー・ストレングス)のルーク・カールソン創業者兼CEOです。

2020年にフランチャイズを開始したディスカバー・ストレングスは万人受け狙いではありません。顧客は富裕層が中心で、主な顧客層は50歳前後、年収60万ドルから80万ドル。やや女性比率が高いといいます。少人数グループセッションは1回38ドル~68ドル、個人セッションは最大80ドル。スーツにネクタイ姿のトレーナーが週2回・30分間の集中的なパーソナルウェイトトレーニングを提供します。
「お客様は何よりも時間を大切にしています。だからこそ、我々は結果が出る、驚くほど効率的なワークアウトを考案しました。露出度の少ないトレーナーの服装規定にはお客様からも好評の声をいただいています」とはカールソン氏。
Sports and Fitness Industry Association(スポーツ・フィットネス業界協会)によると、積極的にピラティスを取り入れている人は過去6年間で約40%増加し、2019年の約920万人から2025年には約1,300万人に達すると予測されています。
近年拡大が著しいBodybar Pilates (ボディバー・ピラティス)はこの数年で米国17州48スタジオから26州75スタジオへと拡大しました。レッスン料金は月額約200ドルでレッスンを10回受けられ、18歳~80歳までの幅広い年齢層の会員がいます。カミール・マッカラム社長によると、ボディバーの差別化要因はきめ細やかな顧客サービスにあるといいます。各スタジオには10~15人のトレーナー、スタジオ、フィットネスマネージャー、そして販売員が常駐し、顧客のスケジュール管理や健康状態の進捗把握を容易にするため、テクノロジー投資にも積極的です。
一方、独自開発のリフォーマーマシンと洗練されたブランドイメージで支持を集めるJetset Pilates(ジェットセット・ピラティス)は2025年末までに10州44スタジオを展開し、280件のフランチャイズ契約を締結しました。会員層は20歳~45歳が中心で月額料金は229ドル~269ドルです。創業者で社長のタマラ・ガリンスキー氏は「長年にわたり改良を重ねたリフォーマーで、あらゆる筋肉群を鍛えることができます。しかし、最大の差別化要因は、私たちのブランドと、マイアミのワークアウトカルチャーを通してお客様が体感する“雰囲気”でしょう。ウェア、バッグ、アロマキャンドルなどのグッズ販売は、現在スタジオ売上の4.5%を占めており、今後はこの割合を10%まで高めたいと考えています」と話します。
米国で言う「ブティックフィットネス」は、日本で一般にイメージされるマンツーマン型のパーソナルトレーニングだけを指すのではなく、個人または少人数制のグループ指導を軸に、専門メソッドとブランド体験を組み合わせ、結果として個別最適化された体験を提供しています。
今回紹介した事例からも、雰囲気やブランドイメージを明確に絞り込み、いかに他社との差別化を図り、特定の顧客ニーズに刺さるコンセプトを構築できるかによって、成熟・飽和しているように見える市場においても、安定的に成長する余地があることが示唆されています。また、フィットネス業界全体が「規模拡大」から「価値・体験重視」へと成長軸を移す転換期を迎えていることも分かります。
日本でもヨガやピラティススタジオは数の上では飽和状態に見えます。しかし、米国発のブティックピラティスブランドClub Pilatesのように、ブランド化・体系化されたフランチャイズモデルはまだ多くありません。高まり続ける健康意識を、個人にとって「最高の継続的な体験」へと昇華できるかどうかが、今後フィットネス系フランチャイズが淘汰されず生き残るための勝ち筋の一つなのかもしれません。
情報元
Why Boutique Fitness Franchises Are Gaining More Ground (Franchise Times)
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