コラムニスト

ラーメンはアメリカで生き残り、さらに発展するのだろうか? 1/3

Ken Ishiyama
2020年4月

米国人のラーメン愛はさらに深く、広く浸透しつつあるように見える。ラーメンもどきを含めると、ラーメン取り扱い店の数は確認が困難なレベルに達してりる。それを追い風に、ラーメンフランチャイズは10ブランドに達する勢いだ。アメリカ人はなぜかくもラーメンを愛するようになったのか?アメリカ人のラーメン嗜好は日本人とは違うのか?ラーメンは寿司のようにアメリカに根を張り生き残っていくのだろうか?ラーメン市場はさらに変化し、あるいは進化していくのだろうか?アメリカにおける現ラーメン市場の分析、主だったプレーヤー、将来性の3つの観点から3回連続でお伝えしよう。第1回目の今日は、アメリカ人の変貌するラーメン熱を分析する。


豚骨ラーメンに始まったラーメン愛が変化している

冒頭に述べたようにラーメン取り扱い店舗の数は確定し難い。寿司レストランや焼肉店、例えば米国牛角などもラーメンを出しているからだ。アメリカにおける豚骨ラーメンを主体するラーメンフィーバーは比較的新しく 最近5〜10年程度の歴史だ。しかし、例えば味噌ラーメンを主役にする札幌ラーメンがリトル東京に店舗を出したのは 40年以上前に遡る。ただし、ほぼ 100%が日本人客だった。空前のラーメンブームは過ぎた感があるか、それは廃れたという意味ではなく、アメリカ人の多くが当然のようにラーメンを食べるようになっただけだ。皮肉なことに、アメリカでは日本人をターゲットにするラーメン店は流行らず、さらには味も劣る。他方、白人系アメリカ人、アジア系アメリカ人を相手にするラーメン店は繁盛している。


本格ラーメン専門店の火をつけた主役は一風堂ニューヨークで間違いなく、その功績は極めて大きい。しかし、オーナーの方針でもあるのだろうが全米に多店舗展開するには至っていない。一風堂をはじめとする本格派ラーメンのほどんどが豚骨ベースであり、その濃厚な味わいがアメリカ人、とくに若年層に強烈にアピールした。それは英語でいう Obsession、いわゆる病み付きになるほどにアメリカでは衝撃的な味わいだったのである。


しかし、ここ1〜2年になってアメリカ人消費者の意識が大きく変化した。肉 食を避け、プラントベース、つまり菜食志向の台頭である。本来、アメリカ人は豚肉を食べない習慣があり、ビーフが一番人気だったのだが今、その消費傾向は横ばい状態が続いている。代わって鶏肉と野菜、しかも肉もどきの野菜加工品への需要が急激に増え、その傾向は定着しつつある。ヘルシー志向、野菜ベース、低カロリーへのニーズがハンバーガーや一般レストランに限らず、ラーメン市場にも拡大しつつあるが、これにすぐ対応できるラーメンブランドは少ない。

12年前、イーストビレッッジにオープンした一風堂1号店の店内である。日本の一風堂とは全く異なる豪華なインテリアと本格ラーメンの豚骨味がニューヨーカーの味覚を捉えた。「日本に往復しなくてもわずか $13で済む」とニューヨークタイムズで紹介された

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