訪日外国人の増加や日本文化の海外での広まりにより、ここ数年で寿司、ラーメン、焼肉、うどんと並んで注目されている日本食が、おにぎりです。手軽で携行性のあるスナックがZ世代を中心に人気のアメリカで、おにぎりは着実に認知度を上げており、マンハッタンやブルックリンではおにぎりを提供するスーパー、デリ、カフェが続々と増えています。
マンハッタンではコロナ禍後、イートインとデリを併設したアジア系スーパーが増えており、日本食材や日本食が格段に買いやすくなっています。丼ものやパンに並び、刺身や寿司の品揃えの豊富さにも驚きますが、日本のコンビニやスーパーでみかけるようなフィルムに包まれた手巻きタイプのおにぎりが陳列されている光景は今や珍しいことではありません。こうして新たな食文化として拡大しているおにぎりが、マンハッタンでビジネスとしてどのような広がりをみせているのか、見ていきます。
musubin’
留学生としてニューヨークに渡った日本人、加藤大暁さんが学生時代に食べたニューヨークのおにぎりのクオリティに疑問を持った経験を起点に立ち上げた、おにぎりのフードトラック(キッチンカー)「musubin’」が昨年マンハッタンのユニオンスクエア近くに登場しました。マンハッタンの街角で至る所に見かけるフードトラックですが、「musubin’」は白を基調にカラフルなおにぎりの写真とシンプルな黒いフォントがデザインされたフードトラックで8種類のおにぎりと、和牛の串焼き、最近は丼ものやうどんなど充実したメニューを販売しています。
この日、私は「めんたいこ」と「うめわかめ」を注文しました。「めんたいこ」は外にハミ出るほどぎっしり明太子が入っています。「うめわかめ」は側面に“ゆかり”と“摺りごま”をまぶし、中にはカリカリ梅とわかめがたっぷり入っています。具が多いのに味が濃すぎることなく、食べ応えは充分です。ニューヨークのおにぎりの硬さに驚いた、という加藤さんの日本人ならではの視点が反映され、お米はふっくら炊かれています。ふんわりと握られたおにぎりは手づかみで完食するには難しいですが、地味になりがちなおにぎりの見た目やアメリカ人が好む食感などが考慮された具材選びがされています。
「musubin’」は現在、音楽の名門ジュリアード音楽院やメトロポリタン・オペラ、ニューヨーク・シティ・バレエを擁するリンカーンセンター街の一角やニュージャージなどにも販路を拡大しています。
米国内外から年間600万人が訪れ、世界のフードトレンドも体感できるマンハッタンを代表する観光地チェルシーマーケット内では、現在2つのスポットでおにぎりが提供されています。日系ペルー料理店「Maki A Mano」と、今年1月にオープンした無印良品の米国初のカフェ併設店舗「MUJI Market」です。
Maki A Mano
「Maki A Mano」のお店に併設したフードスタンド「miniコンビニ」はテイクアウト専用のおにぎり、かき氷、スナックやドリンクを販売しています。導線に面した店構えで、スタッフが調理する姿が見えるので通行人の目を惹きます。休日の午後2時ころという時間帯もあり店の前では多くの人が注文待ちをし、店内には一人きりのスタッフが慌ただしく働いていました。
おにぎりは3種類、「ツナマヨ」、「サーモン」と変わり種の「カレーとうふ」です。タッチパネルでオーダーすると発番され、しばらくすると調理してくれたスタッフに呼ばれておにぎりが提供されます。「サーモン」を注文すると、中身は明太マヨでした。「サーモン」のメニューの詳細にcodroe と書いてあるので、間違いでは無さそうです。やわらかめに握られていますが、お米の炊き加減が硬めの食感でした。
「Maki A Mano」は、今マンハッタンで流行っている手巻き寿司のローカライズ“Temaki(てまき)”を主力メニューとするお店のようです。次回は“Temaki”もレポートしたいと思います。
MUJI Market
おにぎりの種類は7種類で「サーモン」、「からあげ」、「ツナマヨ」、「スパイシーツナ」、「うめ」、「こんぶ」、「ビーフ」です。おにぎりだけでなく、ハンバーグ弁当、サーモン西京焼き弁当、カレーやサンドイッチなど魅力的なメニューの誘惑を振り切り、今回は「サーモン」おにぎりを選びました。具材にはサーモンフレークがたっぷり入っています。ごはんは食感を邪魔しない程度の、ごく少量の赤キヌアと一緒に程よく炊かれ、まとまりがよく食べやすいおにぎりでした。抹茶ラテと一緒にいただきました。
まとめ
今回は3ブランドのおにぎりを紹介しました。「サーモン」、「ツナマヨ」はアメリカのおにぎり店でも定番の具材です。ごはんの炊き加減は個人の好みによるかもしれませんが、品質の均一性の保ちやすさ、比較的負担の少ない調理行程、ほぼ無限に作れる具材のバリエーションでオリジナリティを出しやすいことからも、おにぎりビジネスのポテンシャルを感じました。
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