コラムニスト

ビジネスチャンスが無くて困ることはない

清水直樹(日本アントレプレナー学会 代表理事)
2020年5月

「ビジネスが上手く行かなくなるのは、ビジネスチャンスが無いからではない。多すぎて集中できないからである」


という言葉を聞いたことがあります。


アップル社に戻ってきたスティーブジョブズが、社内にある数多くのプロジェクトを廃止することで会社を復活させた話は有名です。また、バブル時代の日本企業は、手当たり次第に儲かりそうなビジネスチャンスに手を出し、結果的に失敗してしまいました。


私はこれまで、米国を中心とする海外からビジネス系コンテンツ(Eラーニングやコンサルティングプログラム)のライセンスを取得し、日本に展開するという仕事をしてきました。その際、一番の悩みどころが、どれを選んで、どれを捨てるか?という選択をすることでした。


正直、ビジネス系コンテンツにおいては海外のほうが日本よりもはるかに体系化されていて、選択肢が多いため、魅力的なコンテンツが山ほどあります。日本ではまだ見たことのないコンセプト、日本ではまだ体系化されてないコンテンツなどがたくさんあるのです。そのため、あれも良さそうだ、これも良さそうだ、と手当たり次第にアプローチをしようと思えば出来てしまいます。


しかしもちろん、自分たちのリソースには限りがあります。また、いくら良いコンテンツだったとしても、それが自分たちが本当に提供したいと思えるコンテンツでなければ、情熱が続かず、結果的にうまくいかないということになってしまいます。私も過去にそのようなことが何度かありました。


とある有名な不動産投資家は次のようなことを言っていました。


「10年に1度の取引チャンスは毎週やってくる」


 “これは10年に1度のチャンスですよ、今買わないと損します”と売り手は言ってくるのですが、そのような案件は実は毎週のようにやってくるから騙されないで、自分でじっくりチャンスを見極めなさい、という教訓です。




これはおそらく店舗系のフランチャイズ、その他のフランチャイズでも同じことが言えるのではないかと思います。世界を見ればビジネスチャンスはたくさんあるでしょう。でもそこから何を選ぶのかという基準が非常に大切だと思います。


日本で広がりそうかどうか、投資にあうリターンがあるかどうか、そういった合理的な判断基準ももちろん大切になるでしょう。しかしそれに加えて、そのビジネスを自分が本当にやりたいと思うか、また、自社の事業ドメインの範囲内であると言えるのか?といった価値観の整合性も大きな判断基準になると思います。


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